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特集・企画

2023.05.23

口コミ評価トップの人気店は、若者を育てる名店でもあった 〜若者を変えた初アルバイト体験の裏側〜

肉汁水餃子 餃包 六本木交差点 」 アミさんインタビュー

大都会東京のど真ん中、六本木の交差点からすぐの「肉汁水餃子 餃包」。世界的な旅行案内サイト「トリップ・アドバイザー」での口コミ評価が東京の飲食店10万軒中トップという人気のお店です。

このお店で、サンカクシャの若者Aさんが初めてのアルバイトを体験しました。そのAさんが「アルバイトが楽しすぎて時間を延長してもらった」というほど満足度が高い職場づくりの秘訣を探るべく、社会参画担当スタッフの加藤と共に開店前のお店にうかがい、お店の責任者“アミさん”こと小橋拓馬さんにお話をお聞きしました。

看板メニューの水餃子「餃包」は、創業者のルーツ台湾の小籠包とその奥様の故郷熊本の「だご汁」を組み合わせたオリジナルの一品

―こちらのお店のお客様がサンカクシャの支援者でもあることがきっかけで、サンカクシャの若者を採用してくださっているとお聞きしました。Aさんは4月から地方の学校に進学したので、約1ヶ月のアルバイト経験となりましたが、その間のお話を聞かせてください。

アミさん(以下敬称略):最初の顔合わせをZ O O Mで実施した時は、Aさんはあまり話さなかったので、正直なところ少し暗いのかなという印象を受けました。本人から人と接する仕事をしたいという希望があったので、まず接客のロールプレー(スタッフ同士が店員役とお客さん役に分かれて行う接客の練習)をやりました。うちの店の一番人気の水餃子を美味しく食べてもらう食べ方の説明のロープレをしたんですが、意外とスムーズにできて。英語が話せるというので、試しに英語でもやってみたところ、スラスラと説明できたんです。「すごいなAちゃん。すごいね」と。そこからお客様とのコミュニケーションを主体的に始めたんです。

最初ってちゃんと説明しなきゃとか業務を間違えないようにしなきゃっていう方に意識があると思うんです。ただ、慣れてくるとそれを意識しなくても自然と言葉が出てくるようになって、ほかのことに意識を向けられるようになるので、お客様の興味関心やリアクションを確認しながら接客ができるようになるんです。Aさんはそこに到達しました。最終的には自らお客様にいろんな話をしていました。当初あまりしゃべらないのかなと思っていたので、人って1ヶ月でこんなにで変わるんだと思いました。

来店した社会参画担当宮本と生き生きと働くAさん

―最初にロールプレイをしっかりやってくださったことが良かったのですね。

アミ:これはうちの店が大事にしてることの一つでもあります。料理をしっかりとテンポよく提供するために仕込みをするんですが、それと同様で接客にも仕込みが必要だと思っています。お客様にサービスする前に、ロールプレイという仕込みをして、しっかりと伝えたいことが伝わる状態にしてサービスした方が、お客様に気持ち良く食事を楽しんでいただけます。ロールプレイをやっておくことで現場でも1回目がうまくできて、その後もうまくいきやすくなります。

-働くことにあまり慣れてない若者に接する時に心がけてることはありますか?

アミ:特に20歳前後の人は基本的にマインド、ノウハウ、スキルがない状態なので、マインド教育もしながらノウハウとか仕事のやり方も含めて育てていきます。マインド面で言いますと、どんな思いでお客様に接するべきなのかとか、目の前の人に喜んでもらいたいということを考えながら仕事をすることが大事ということを逐一確認しながらですね。

スキル面では、例えば、お客様と関係を築くには、1回目の話す量を増やすよりも短い時間で何回も接触することが大事と教えます。心理学の世界ではザイオンス効果と言うんですが、単純に接触回数が多いことがその人との人間関係を構築しやすいということです。下げるお皿がないかとか、グラスが空いてないかとか、ゴミはテーブルの上に置いて無いかとか、お客様の状態を観察してちょくちょく覗きに行くのが大事です。この辺りを一つ一つしっかり教えていくことが大切だと思っています。

-接客に心理学まで応用して、コツをしっかり教えているのですね。職場全体を作るために実践されていることも教えてください。

アミ:この店では上司と部下みたいな上下関係が基本的にないんです。みんな対等な立場で、そこに違いがあるとしたら役割。相手を知る努力をお互いにした上で、その人の強みは活かして弱いところは他の人がフォローし合えばいいと思っています。チームがうまく回るように生かし合いとフォローし合いを大切にしています。

ミスを責めたところで何もプラスには働かないので、次回どう改善しようかと一緒に考えることが大事です。もし同じミスが2度3度と起きるのであれば、仕組み的に改善できることはないかと考えることが、成長できる組織としてのポイントではないかと考えています。

スタッフ旅行でのスナップ

-これまでのご自身の経験を教えていただけますか?

最初はこの店の客だったんです。その後、仕事を辞めて次はどうしようかなっていう時にご縁があって、2015年 3月から働き始めました。ところがそのタイミングで、親が妹の大学の学費を払えなくなってしまったので、親孝行のために自分が肩代わりをすることにしたんです。飲食店でアルバイトしても年間100万円以上の学費を自分の生活費とは別に支払うことは無理だったので、飛び込み営業の仕事をすることしました。この店には、入ったばっかりですぐには辞めづらくて、結局月1回シフトに入るくらいでした。

その後、飛び込み営業で毎月の目標達成率が200%以上のトップセールスとなり、前倒しで学費を収めることができたんですが、目的を達成した瞬間にもうやる意味がないと思いました。それで、ずっと幽霊シフトでやってたこの店の人間関係が心地良かったし、自分も食べることが好きなので、ここで力になりたいと思い、シフトの日数が徐々に増えていきました。

その頃、お店では採用で苦労していて、採用活動に人的リソースがさけなかったので、じゃあ僕が採用やりますと自主的に手を挙げてやり始めました。また、今もそうなんですけど当時から財務諸表がフルオープンで、売上がいくら、原価がいくらと毎日公開していたんです。それを見たら一部借入金があったので、その借入金の返済計画を会社に提案して、社内からN Gがなかったので、じゃあ進めますねと。そういういろんな意思決定の実績が積み重なって「アルバイト中でもC E Oみたいに動いてるよね」っていうことで“アルバイトC E O”という役割に着いて、現在は取締役として活動しています。お店のことや働いている人たちのことが好きだから、主体的にやっていたら今になったという経緯です。

加藤:その主体性がどこで培われたのか、ぜひお聞きしたいです。

アミ:最初はまったく自分から積極的に行動する人間ではなかったです。高校、大学時代に、仲良くしていると思っていたグループから外されてショックだったんです。もう自分の意見を発信しないで周りの意見に従っている方が傷つかないからいいなあって思っていたのが十代です。

20歳ぐらいのときに大学を中退して、自分には何もない状態で、もう実績を作るしかないと考えました。そこで本を読んだり、経営者の講演会を聞いてるうちに、まずはマインドから変えていくことが必要だと学びました。一番最初は感謝を土台とした生き方をしたいとか、誠実に仕事したいとかいうところから培って、レンガを積んでいくような感じで小さな思いを積み重ねて、今に至りました。

当時働いていた人材派遣の会社の上司が、ある人材教育の会社の社長を大尊敬していて、上司から「(その社長の)講演会に行ってみたら」と声をかけられたので、試しに行ってみました。今振り返るととても失礼なんですが、その社長の講演を聞いて「なんか胡散くいさいのかそれとも本当のことを言ってるのかどっちなんだ? 最悪、騙されても良いからこの人から学んでみよう」と、思い切って自分でお金を払って外部研修を受けたことが1つの転機でした。

もう1つ、当時お世話になってた人材派遣会社が講演会を企画していて、同期が講演会開催チームの一員として活動していました。チケット販売ノルマがあったようで、同期を助ける思いでチケット購入したら、それが「なんでも鑑定団」にブリキのおもちゃ鑑定士として出演していらした北原照久さんの講演会でした。

北原さんはおもちゃのコレクター以上に言葉のコレクターで、“夢の実現十か条”とかいろんなお話を聞いて。質疑応答で「どうすればもっとお話を聞けますか?」と質問したら、北原さんが運営している塾があると教えてくれて、その場で申し込みをして以来、お世話になっています。今は塾生というよりお手伝い側として参加しています。北原さんも「おもちゃの博物館」という自分の夢を実現させた方ですが、どうしたらそういう大人になれるのかを北原塾で学びつつ、その成功のマインドや技術を培ってきました。

加藤:少し先を生きている方の生き方から受ける影響って大きいですよね。サンカクシャの若者も、自分がこうなりたいという大人との出会いが大事なんだと思います。若者に働く体験を提供しているサンカククエストでも人との出会いに価値があると思っています。

-サンカクシャに対してどうお感じになってるかを率直に教えてください。

アミ:本当に率直な意見ですけど(笑)、「若者を紹介していただきありがとうございます」という思いです。ご縁があった若者の強みをどうしたら活かせるんだろうと常日頃考えています。強みが生かせるとその人の自信につながり、自信の育成ができれば、うちを卒業して他の組織でも活躍しやすくなると思っています。そういう人材を世の中に輩出して行く事というのはすごく大事だと考えているので、貴重な機会をいただいてありがたいです。

実は、個人的には社会的養護を受けている子の支援などももっとして行きたいなと思っています。18歳で児童養護施設を出た子の7割以上が進学を希望するものの、お金の問題とか色々あって実際には半数にも満たない子しか進学できずにいると聞きました。社会に出るにも、まず生活を確保する必要があります。結果的にやりたいことを二の次にして社宅があるところで働いて、環境が合わなくて辞めてしまうことが多い。その子たちの行き着く先は男性は闇の世界だったり、女性は風俗業界と水商売などになりやすい。

本当はやりたいことがあるのにその可能性が狭まってしまうのはもったいないと思います。社会貢献というのはおこがましいかもしれないですけど、そういった社会の課題に対して何かできたらいいなと思っています。最初は何を始めたらいいかわからなかったので、まず支援団体のボランティアに参加して、1年半くらいやって自分を知ってもらいました。そしてその団体から若者を紹介してもらっています。今日働いているスタッフの中にもそういう若者がいますが、大きな成果を出してくれています。

加藤:若者の住まいの問題は、今まさにサンカクシャも重点的に取り組んでいるところです。やっぱり寮付きの仕事がなくなり住むところがなくなってしまった若者がいて、その子のためにシェアハウスを作ったことが始まりです。

アミ:以前、青森で高校を卒業した子が上京してうちの店で働いたことがあったんですけど、社宅用意しないといけないねという話になり、家賃の半分を会社として補助したこともありました。

加藤:家賃を補助するというのはとても良いですね。家を借りるには保証人がいるんですよね。そうすると親に頼れない子は家を借りられない。サンカクシャでもこの問題を何とかしたいと考えています。

アミ:その子は、今はほかの会社で活躍しています。うちの店では辞めるっていうより“卒業して行く”って言ってるんです。うちで育成した人材が社会で活躍してくれる、それが社会のためになると思っています。

加藤:Aさんも1ヶ月の経験で大きく成長しました。積極的に人と話したり、関係を築けるようになったと思います。

アミ:本人が卒業していく時に、「またすぐ働きたいです」と言ってくれたことが嬉しかったです。「進学先の地方でいろんな組織を見て来るといいよ」と話しましたけど。

満面の笑顔が人を惹きつけるアミさん(右)と加藤

現在は地方で学生をしているAさんからコメントをもらいました
餃包さんでのアルバイトの経験は、人とコミュニケーションをとる自信になりました。スタッフさんが自分のことを褒めてくれたことがきっかけで、自分も人の長所を口に出して伝えるようになりました。
海外からのお客さんに英語で接客をして、色々な話を聞くことができました。質問をたくさんした時に自分の話が伝わっていたことがわかり、嬉しかったです。世界中の人とつながりができたので大切にしていきたいです。

アミさん、お忙しいところお時間をいただき、ありがとうございました。サンカクシャのスタッフ一同、これからもお店に通わせていただきます!


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