桜の咲く季節になりました

キチの近くではコヒガンサクラが美しく咲いています。私が桜の名前を知っているのは、ある若者と散歩をしたからです。

　最近の出来事に暗い表情のまま過ごす様子を見て、キチの外に誘い出しました。近くにある幾つかの公園に出かけ、桜をはじめ彼女の好きな花を見てまわりました。散歩の間はお互い話さず、たまに花の名前を調べたり写真を撮って見せ合ったりとゆっくり過ごしました。私が花壇に植えられたユキヤナギを撮影している間、彼女はしゃがみこんで小さな花を撮影していました。その姿勢になってやっと認識できる花に気付くこと、そして愛でるように写真を撮る姿を見て、優しい子だなと改めて思いました。気付けば表情も柔らかくなり、キチに戻る頃には自分のことも少し話せるように。たまには自分にも優しくしてあげてね。

　また別の男の子とも桜の話をしました。彼は様々な理由で感情表現に悩むことが多いです。その子が「桜が綺麗ですねと言えるようになりました」と教えてくれました。これは３つの意味があって、１つは桜を見た時の気持ちが“綺麗”だと知ったこと、２つめはその気持ちを表現できたということ、３つめは伝える相手がいたということ。出会った時の彼では適わなかったことで、自分と向き合い、サンカクシャやバイト先などで経験を重ねたからこそのこと。本人にもすごいねと伝えつつ、じーんときてしまいました。

　２人とも最近はキチで話せるスタッフも増え、ここからまた少しずつ居場所を広げていける気がしています。この２つの出来事は、来年また桜が咲く頃に思い出すだろうな。

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