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活動報告

2024.02.14

東京藝大「卒展」に行きました! 〜対話をしながら同世代の作品を鑑賞〜

1月29日(月)、サンカクシャを利用している若者が、東京藝術大学の卒展(卒業・修了作品展)を、アート好きの大人のグループと鑑賞しました。

この企画は、アートと若者をつなぐ活動をしているグループFlatart(フラッタート)とサンカクシャアート部のコラボ企画として行っているもので、昨年に続いて2度目の開催となりました。今回は、昨年も参加した若者3名に加えて、初参加の若者2名の計5名が参加しました。

当日は、午後1時前に若者とFlatartメンバーがJR上野駅公園口に集合。柔らかな冬の日差しの中、上野公園を横切って卒展会場の東京都美術館へと移動しました。歩きながら、リピーターの若者とは「最近どうしてる?」、初参加の若者とは「これまで美術館に行ったことある?」などと会話をしながら緊張をほぐしていきました。

東京都美術館に到着。全体の流れや注意事項などを説明した後、2つのグループに分かれて自己紹介をしました。Flatartのプログラムでは、毎回、場を温めるためのアイスブレークとして簡単な質問をします。今回は「今、ハマっている食べ物は?」でした。(出てきた回答は、「お鍋」「サラダチキン」など、世代の差をあまり感じないもので、打ち解けることができました。)

その後、グループごとに会場内を巡りました。東京都美術館内には、東京藝大の学部4年生の卒業制作が所狭しと展示されています。油画、日本画、彫刻、工芸、デザイン、建築、先端芸術表現という幅広い学科のエネルギーに満ちた作品を観ながら、制作者である学生さんたちと話ができることが卒展の魅力です。

1時間余りの時間で、すべての作品をじっくり観ることはできませんが、今回は、卒展を体験し、自分の気になる作品に出会うことを目標としました。

若者の気になった作品の前で立ち止まり、スマホで写真を撮ったり感想や気づきを共有しながら進んでいきます。

今回初参加で、これまであまり美術館に行ったことがないという参加者は、素材や表現方法の多様さに驚きながら「すごい!」「どうやって作ったの?」と連発していました。日頃から美術館巡りが趣味の参加者は、「この作品はこういう背景で作られているんだなって見えてくる」とクールに語りながら鑑賞していました。(この若者は、結局、卒展に4日連続で足を運びました)

展示巡りの最後には、2人の学生さんにお願いして、作品の背景や制作方法などをお話しいただきました。

油画科 梅本匡志さん 「zion」
鹿児島の実家から出てきて住んだ湘南の地で出会った仲間たちと景色を描いた作品。「zion」はユートピアという意味で、自分にとって帰る場所であり原点のような場所でもあるという意味も含んでいるそうです。

彫刻科 増田充高さん 「 HEART BEAT -knuckle head-」
大学の研修旅行で奈良に行き仏像について学んだことから着想を得て、自分にとっての”ご本尊”と言えるような存在としてバイクの原型ともいえる1930年代のハーレーを木で彫った作品。

お二人のお話から、自身の見ている世界や好きなものを作品に表現し、真摯に制作に向かっている姿勢が伝わってきて、同世代の若者に刺激や共感が生まれる場となりました。

鑑賞後は、館内の休憩スペースに座りながら、それぞれが気になった作品についてスマホの写真を観ながら話しました。

ある若者は、「The end of line」という障害をテーマにした映像作品(先端芸術表現科 笠原莉花子さん)が気になり「障害と診断されていなくても生きづらさを感じている人もいると思う」という趣旨の発言をしていました。また別の若者は「愛すべき人類/上手に紛れようとする」という作品(デザイン科  中山胡桃さん)に、「この作品、私と似ている。私も周りに紛れようとするタイプなので。」と話していて、それぞれ作品の意図を汲み取りながら自己の内面と結びつけて観ていることが伝わってきました。

プログラムとしてはここで終了となりましたが、昨年、もっとゆっくり観たかったという意見があったことから、その後は自由鑑賞としました。疲れて帰る若者がいるかと思いきや、1人の若者が映像作品をゆっくり観たいと美術館に残り、他の若者は全員、隣接する東京藝大キャンパスでの展示も観たいということで、そちらに移動して自由に鑑賞を楽しみました。

以下に、参加メンバーの感想を一部ご紹介します。

若者の感想
作品を作成した作者の方から直接お話を聞いて、作品の意図や作っていたときに思ったことなどを知ることができて面白かったです。貴重な体験でした。

複数人で美術を鑑賞する機会があまりないので、グループの人と作品について感じたことを共有する時間が楽しかったです。

どの作品も、なぜこのような作品を作ったのか?という作品の背景を知りたくなるものばかりでした。自分の内にある隠れた好奇心を強制的に顕在化させられた機会だったので、かなり面白かったです。

あまり美術館に行かないから色んな作品を見れてとても良かった。また展覧会とか行きたいです。

Flatartメンバーの感想
若者は初対面の大人に対してどう接するかの戸惑いがあるように思いますが、それでも話していると徐々に打ち解けて来て、特に「作品を介する」ことでお互いの思ったことを話し合えるので、距離がグッと縮むのを実感しました。

若者と接した中で、目の前にあるアートを純粋に楽しんでいる、アートを難しいこととせずその絵に描かれている状況を素直に感じる澄んだ目の持ち主たちだと気づきました。

参加した若者が今まで自身の視野にはなかったアートに触れて生き生きとしている様子を見られて、そばにいた自分もとても楽しかったです!

Aちゃんとは、会うのが4回目くらいなので、Aちゃんからの言葉を待つタイミングを私がわかるようになった気がします。関わり続けていくことの大事さを実感しています。

体験や人との出会いを重ねて社会につながっていく

サンカクシャでは、親に頼れず住まいがない、仕事と家を同時に失い路頭に迷った、孤独で精神的な辛さを抱えている…など、困難な状況におかれた若者に、まずは住まいや居場所を得ることで安心してもらいます。その上で、さまざまな体験や人との出会いを通じて少しずつ社会につながっていく機会を提供しています。経済的な自立のみを急ぐのではなく、多様な経験や人との出会いの中から自分自身を発見し、生きる意欲を回復することが、今後の人生を自分の力で歩んでいくために大切なことだと考えています。

そして、「若者、先生でも保護者でもない大人、アーティスト」が、アートを囲みながら立場を超えてフラットに関わる場づくり」を実践しているFlatartと、サンカクシャの考え方が共鳴することから、この企画が実現しました。

参加した若者には、お金のこと、仕事のことなど、日々向き合わなければならない問題がありますが、どの若者にとっても、この日のできごとが日常から離れた少し特別な体験として心に残ることを願っています。また、今後も若者の興味や関心に沿って、アート部としての活動を考えていきたいと思います。

最後に、いつも楽しそうに場をつくってくださっているFlatartメンバーの皆さん、お忙しい中、快くご協力いただいた東京藝術大学の梅本さん、増田さんに感謝いたします。


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