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活動報告

2023.06.14

若者が動画編集を通してモヤモヤを表現するプログラム、でもチームはばらばらで大ピンチ

ある日曜の午後、渋谷ヒカリエ26階。

TikTokを運営するバイトダンス株式会社のワークスペースには、各団体から集められた10~20代の若者たちが、制作動画の発表を目前に控え、そわそわとお喋りしている。

そんな中、サンカクシャの若者は1人不安そうに発表の準備をしていました・・・


このたび『当事者クリエイター塾 with TikTokーその「経験」を、社会を変えるチカラにー』のプログラムに参加しました。

プログラム概要はTikTok公式noteより引用します。

TikTok Japanは5つのNPOと連携し、若者の情報発信をテーマとしたプロジェクト「当事者クリエイター塾」を開始しました。当事者クリエイター塾は、全3回のプロジェクトで、若者が自らの「経験」から生まれた思い・考えを、社会へのメッセージとして伝える動画の制作を目指します。今回はその第1回として、動画の企画の方法を学ぶワークショップを渋谷区のTikTokオフィスで開催しました。

実施にあたり、私たちが懸念していたことは「当事者」という表現でした。

それぞれNPO団体につながる若者たちは「当事者」ということを意識せずに(あるいは忘れたくて)過ごしているのではないかと考えていました。

ただでさえ新しいことにチャレンジするのが苦手なメンバーです。2022年夏のAppleプログラムを経て、若者のモチベーションを維持することが肝になると想像しました。

そのため、表面的な説明だけでは、1チーム5人を集めるのは難しいと思い、無理を言って塾長の山田さんと、TikTokの金子さんに、サンカクキチまで足を運んでいただきました。

山田さんは大手広告代理店のキャリアを経て独立。当事者に寄り添い、その人にしか発信できない、社会的なメッセージを世の中に届ける活動をしています。

例えば、育児をしているお父さんお母さん。
小さな子供を育てて大変な毎日を過ごしている「当事者」です。
例えば、日本の高校生。校則が厳しくで窮屈だなぁと思っている、
そんな高校生も「当事者」です。
つまり、当事者とは、ある状況において、
「何んだかモヤモヤするな」「違和感を感じるな」「もっとこうなったらいいのにな」と感じているヒトのこと。
日々、生きていれば、「モヤモヤ」や「違和感」を感じない人はいませんよね。
そう、誰だって、何かの当事者なんですよね。

山田さんは若者たちの間にすーっと入っていって、夕飯を食べながら、それぞれの好きなこと、いま悩んでいることなどを熱心に聞いてくれました。

金子さんも若者と同じ目線に立って話してくださり、若者からのTikTokで稼げるの?など質問に答えてくれて、めったに会えない社会人との交流の場になりました。

あいにくTikTokユーザーが少ないこと、体調的に通えないこともあり、参加者は3人。

撮影のときには、キチの子も協力してくれるとあって、動画制作ワークショップは少数精鋭で臨むことになりました。

モヤモヤをぶつける

第1回目の2/12(日)企画ワークショップでは、プログラムの説明を受けてから、実際に普段のモヤモヤや、団体のいいところをふせんに書き出します。

【モヤモヤ】
・学校では「個性」を殺すのに、社会では「個性」を活かすのはおかしい
・人が多すぎて困る・ネガティブな思考になりやすい
・行政の対応が遅い

【団体のいいところ】
・若者もスタッフも面白い
・いい意味で上下関係がない
・サンカクキチに気軽に行ける
・詮索しない
・自分が浮かない

同行したスタッフも気付けば熱心にペンを走らせています。

キチの中で互いのことを知ったつもりでいたけど、いざ社会へと目線を上げてみると、こんな不安や不満があり、それを解消するひとつにサンカクシャがあるんだと分かって、脳から汗がでる快感でした。自らの想いを発散するのは楽しい。

問題はここからです。こうした本人が感じていることを元にして、どうしたら良くなるのか?社会に伝えたいことは何か?を考える段に入ると、とたんにペンが止まります。

そう、自分の中に不満や想いはあれど、それを社会に発信するような頭に切り替えるには、すごく時間がかかるのです!!

具体的な作業としては企画書を書くんですけど、これは若者に限らずスタッフも大苦戦!

企画書は棒人間でいいよーと言われながらも、若者は他者に伝えるというプロセスが苦手なので、1行で終わり、なんてことも。頭の中にはあるんです、と言われても、こっちは分からないので話を聞くしかない。

山田さんが各団体のテーブルをまわりながら、アイデアを少しずつ言語化してくれて助かりました。

チームでひとつのものをつくる難しさ

サンカクキチに戻ってからは、自分たちで企画書をコンテに落とし込みます。

言われたものをつくるより、自分たちが表現したいものをと思い、若者たちにミーティングを任せてみたら、見事に意見が割れてケンカが始まってしまいました(笑)

相手の意見を聞かない、自分の意見を言わない・・・など、それぞれ苦手とするものは分かりますが、普段スタッフとのコミュニケーションでは問題なかったことも、若者同士では譲れないものもあるのでしょう。

相手の意見を最後まで聞くこと、相手の意見を否定せずに話し始めることといったミーティングのルールを再確認。スタッフが間に入って交通整理しながら、企画書の内容を固めます。

これ、社会人になるための基礎訓練かもしれませんね。

ケンカをして嫌になってしまった若者は、それきりキチに顔を見せなくなりました(笑)

企画内容には納得したはずなんですが、人間関係でもめると、一気に関係をリセットしようとするのも、寂しいですが、最近の傾向だと感じます。あんなに熱心に話していたんだけどなあ。

仕方ないので、2人と一緒にコンテ制作を進めます。

2人が選んだテーマは「就活に関するモヤモヤ」。これまで経験してきた、就活で嫌だったことを、多少誇張しながら動画にするというもの。

最初は恥ずかしがってなかなか話題が膨らまないものの、山田さんから引き出してもらいながら、この瞬間がむかついた!こんな困ったことがあった!という気持ちも少しずつ表現できるように。

リアルなエピソードを出してもらうにあたって、しんどい気持ちにならないかなと心配しましたが、笑いながら話す姿に、たくましさを感じました。

セリフを考えて、出演者にオファーして、やることはいっぱい。

役割分担しても得意不得意があるから、思うようには進みません。そんなとき互いに思いやり、コミュニケーションをとれればいいのですが、「自分ばっかり」と不満が募るのも、グループ制作ではよくある光景かもしれません。

学校生活や社会活動で、こうしたシーンを上手く乗り切るには、個人的には、話し方(お願いの仕方)や感謝が大事だと感じるので、ときどきテコ入れしつつ見守りました。

さあ、いよいよ撮影当日。

かき集めた衣裳(と言ってもスーツですが)をなんとか着て、サンカクキチの事務所でスタート。塾長の山田さんがプロの視点でアドバイスをしてくれたおかげで、スケジュールや撮影のポイントがみるみる明かになっていきます。

TikTokの短い動画だけど、シーンが多いと管理も大変になります。「シーン1テイク2」と山田さんのメモ書きがあって助かりました。また、あとで撮りなおすことのないように、念のため~のカットも確保。自分たちでカメラをまわしているだけでは気付かない、プロならではのサポートでした。

セリフ回しや動きを練習する子、画角を決めて監督に専念する子とそれぞれが頑張っている様子を見て、私は半分ぐらい完成した気持ちに。

動画チェックしているときも笑いが絶えず、普段やらない体験をする面白さを感じているようでした。「就活に関するモヤモヤ」がブラックジョークの色を帯びているのも、この撮影の雰囲気が大いに影響していると思います。

いよいよ発表!でもやっぱりハプニング!

第2回目の3/19(日)ワークショップは朝からはじまりました。

人気TikTokクリエイター・仮面マン君が指導する編集ワークショップを終えて、昼休憩をはさんでから、いよいよ自分たちの企画動画を編集・発表します。

そのはずなんですが!午後になっても、若者がもう1人来ない・・・!

ついに若者1人になってしまったサンカクシャチーム。ごめん、頑張って!

幸いにも構成を考えてくれた子でもあるので、午前中に習った編集スキルを駆使して、その場で作業します。動画編集アプリCapCutが本当に使いやすくて良かった。

自分たちの実体験が字コンテとなり、絵コンテとなり、そして撮影されたものが動画として1本の作品に仕上がるのは、とても感慨深いことであり、同時に、慣れないうちはちょっと大変でもありました。

ここまでくると恥ずかしさや気後れはもうなくて、周りに質問しまくっています。まさにピンチから生まれたチャンス。

そして、無事に1本を仕上げることができました!

今度は完成ほやほやの動画を、他のチームに発表します。これも1人で・・・!

いつも大きい声で喋るタイプと思っていましたが、人前は緊張するらしく、事前に喋ることをメモしておいて、しっかり準備して登壇。動画もばっちりコンテ通りで、お見事。

これからも拍手をもらうことの嬉しさを感じてくれるといいな。

いろいろあったけど、立派に発表できて、この3か月ほどで動画編集のスキルだけじゃなく、人の成長を垣間見ることができました。

今回はチームでひとつのものをつくる難しさがあったけれど、それぞれの若者にとっては人付き合いを学び、自分の可能性を感じる取り組みになったのではないかと思います。

また自己表現することは大切で、自分たちの不満や不安をぶつけるだけでなく、どう他者に伝えるかを考えるきっかけをいただけたことも、このプログラムの醍醐味となりました。

そして、チームビルディングや自己表現のためには、たくさんの経験が必要であることもよく分かりました。人とぶつかって解消してをくり返すうちに、カサブタのように強くなっていくのだと信じています。

このような貴重な機会をいただき、当事者クリエイター塾に関わるみなさまのご協力に心より感謝申し上げます。


若者が制作した動画はこちらからご覧ください。(タイトルは「こんな面接は嫌だ」です)https://www.tiktok.com/@toujisha_creator?is_from_webapp=1&sender_device=pc

★プログラム全体についてはTikTok公式noteをご覧ください。

若者の思いを「伝わる動画」に!TikTok、5つのNPOと連携して『当事者クリエイター塾』を開催https://note.com/tiktok/n/n9c64c6d74947

NPO5団体がショート動画を制作した『当事者クリエイター塾』が完了。各チームが制作した動画を公開https://note.com/tiktok/n/n00c203cf2778


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ライター

宮本 緑

社会サンカク事業担当

活動報告

2023.06.14