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活動報告

2023.04.03

2022年度のサンカククエスト総括と若者たちの挑戦 〜担当・宮本がふりかえる 〜

2021年10月に始まったサンカククエストも、今では284回、のべ426人(2023年3月末時点)の若者と一緒に実施してきました。
ひとつのクエストをとってみてもドラマが多すぎて・・・年度おわりのタイミングを利用して、あらためて2022年度の振り返りにお付き合いいただければと思います。

サンカククエストは、働く自信がない若者の一歩目を応援する仕事体験プログラムです。
若者を応援したいと思う方から仕事(クエスト)をいただき、若者が安心して参加できるように、サンカクシャが間に入ってサポートしています。

具体的には、若者に実行可能な作業内容を切り出したり、事前に打ち合わせを設定したり、当日も相談に乗ってくれるサポーターを手配、もしくはスタッフが同行したりと、若者の不安を取り除けるような働き方を柔軟にコーディネート。

若者がクエストをクリアするたびに、小さな成功体験となり、関わる人とのつながりや、誰かの役に立つ喜びを感じてもらうことで、自信をもってほしいと願っています。

1.サンカククエストに参加するための準備

サンカククエストを始めたての頃は、若者の不安を、次のように経験不足からくるものと大別していました。

・働いたことがない
・知らない人が怖くて働けない

しかし、さまざまな若者のマッチングを進めるにあたり、そこから複数の要因が絡み合っていると分かるようになりました。

・働かなきゃと思うけど、今までの生活習慣を変えられない
・自分では決められない、責任を負うことが怖くてチャレンジできない
・やりたい気持ちはあるけど、予定に合わせて体調を整えることができない

そのため、サンカククエストのような仕事体験をいきなり提案しても、若者がチャレンジしたいと行動できるまでに、途方もなく時間がかかります。

そこで居場所であるサンカクキチで、「ブカツ」という、ゆるい体験活動が増えていったのも、この1年間の大きな変化です。

    【ブカツ例】
         ・編み物・刺しゅう
         ・フットサル
         ・キャンプ
         ・おすすめ本・漫画の紹介
         ・美術館めぐり
         ・街のゴミ拾い活動
         ・ゲーム大会
         ・社会人との交流会

自分の好きなものを見つけるきっかけ、イベント日時に合わせて行動するモチベーション、他者(特に遊びに来てくれる大人)と交流する練習として、大いに役立ちました。

まずはサンカクキチに来る、という習慣が若者にできると、顔を合わせる機会が増えて、私たちスタッフも彼らのさまざまな悩みを聞けるようになります。

「バイトしてみたいんだけど・・・」

そんな1人1人の希望や悩みに寄り添いながら、サンカククエストを設計・提案していきました。

2.クエストのマッチングが難しい・・・!

若者が体験するとはいえ、仕事である以上は責任を伴うもの。

一方で若者は体調不良で継続できないこともあるため、仕事の依頼を受けるときは、依頼主の若者への理解が必須となります。

そのためクエストと若者をマッチング・実行するときは、関係者には意識的な努力が求められます。
依頼主には、若者の特性を理解いただいた上で、納期・クオリティに融通を利かせていただくこと。
一緒に作業する伴走者には、若者との信頼関係を築けるような接し方とサポートをいただくこと。

そして若者には勇気を持ってチャレンジし、楽しんで参加するための最低限の約束を守ってもらうこと。

私たちスタッフは、若者と依頼主の間に入って連携し、クエストを安心・安全に実行できるように、上記の歩み寄りを働きかけてきました。受け入れる企業担当者からは「サンカクシャが間に入ってくれているから安心」という言葉も。

ひとつのクエストをマッチングするために、協力してくださる依頼主・伴走者の方をはじめ、各方面に少しずつ努力していただいているので、こちらとしては若者支援のチームメイトのような気持ちで臨んでいます。

いつも若者を見守り励ましていただいていることに感謝するばかりです。

3.サンカククエストは「やってみたい」を実現する

そんなサンカククエスト2022年度の実施例を一部ご覧いただきましょう。

【サンカククエスト例】
       ・チラシ封入・袋詰め
       ・ピッキング・仕分け
       ・データ入力
       ・制服・ジャージの刺しゅう取り
       ・SNS発信用の記事作成
       ・飲食店の仕込み・接客
       ・イベント手伝い
       ・畑仕事
       ・アプリ開発
       ・記帳代行
       ・チラシやバナーのデザイン・制作
       ・動画編集

誰でもできる軽作業は相変わらず人気です。対人関係を不安に思う若者にとって、ひとりもくもくとやる作業が心地よいらしく、クリアすることで小さな達成感も得られます。

一方でバイトと言えばカフェをイメージする層も一定数いて、「カフェで働いてみたい」「でも接客できるか不安」という想いに応えて、カフェバイトの前にいくつかクエストで選択肢を用意できるようになりました。

また専門的なスキルを教わりながら仕事を体験する機会も増えて、本人の意欲を伸ばしているところです。

<実店舗でレベルアップするクエスト>

カフェや飲食店の接客にハードルを感じる若者には、仕込み作業を体験してもらいました。

ゆで卵の殻をむき続ける、ドリンクを作ってみるなど、簡単な作業から始めていき、職場の雰囲気や作業に慣れた頃に、次のステップにチャレンジするといった試みです。「もっとできる」と新しい仕事を覚えていく若者もいて、ゲーム感覚でレベルアップする様子はクエストそのものでした。

仕込みは決して楽しい仕事とは言えないかもしれませんが、若者には参入しやすく、実店舗で飲食業のイメージが持てる、ありがたいクエストでした。

<接客クエストも慣れれば平気>

イベントやバザーなど、1日だけの接客体験でも若者の成長を見てとることができます。

パン販売では初めてのレジ打ちを経験したり、バザーでは「いらっしゃいませ」と初めて言ってみたり。最初は緊張でガチガチだった若者も、何度も繰り返す内に慣れてきて、終わる頃には風格すら漂っています。一般のお客様を相手にするので、付き添うこちらも注意していますが、作業内容を教えてくれる依頼主側のスタッフさんが優しいので、仕事を教わるという関係性も楽しんでくれているようです。

<クリ研はアップデート中>

2021年末にサンカクデザインスクールでお世話になった有限会社ヒゲプロがNPO法人リテルとして、今年度もクリエイティブなクエストのサポートをしてくれています。

特に依頼を受けたチラシ制作を、デザイン新入生の若者に挑戦してもらうなど、有償クエストがどこまで実現可能か試行錯誤していました。リテルさんと一緒にチラシに取り掛かるものの、デザイン方程式やスキルはすぐには身に付きません。やはり若者のスキルアップを最優先に、AdobeIllustratorの講座などを繰り返していただきました。

実施場所はサンカクキチかつデザインソフトをインストールしたパソコンを貸与するので、若者にとっても体験しやすく、どんどんスキルを吸収していく子もいます。自己表現は苦手だけど、他の人から依頼されて制作するなら頑張る、という心理が働きやすいことも、こうした制作を通じて知ることができました。

<クエストを通じて若者の生きづらさを知る>

一方で、すべてのクエストが上手くいったわけではありません。

たとえば週1回の体験を繰り返すスケジュールのクエストでは、若者のバイオリズムがもろに影響します。通常のサンカククエストは単発が多いため、その日だけ無理して、一睡もせずに参加するなんてこともあります(やめてほしい笑)

しかし毎週となると、体調が悪くて当日キャンセルする若者や、必ず5~10分遅刻してしまう若者がでてきます。本当にありがたいことに、受け入れ企業の担当者さんが振替日を調整するなど配慮してくださいますが、一般的な雇用制度では、こうした若者が働き続けることは難しいかもしれません。

また、あるときは短期間で4人の若者が一斉に軽作業するクエストがありました。

4日間連続の勤務のはずだったのですが、1人の若者が2日目以降、シェアハウスの同居人にバトンタッチして、毎日人が替わる上に、4日目には来ないという困った事態に。

すべてが終わったあと話を聞くと、初日に作業場の雰囲気が嫌になったから〇〇君に頼んで・・・を繰り返し、最終日は頼まれた側は自分が行くと思ってなかったと。呆れ果てるとともに、相談するという選択肢がとれなかったのは、私との関係性ができていないからだよなとか、もっと小さい成功体験を繰り返してからが良かったかなとか反省しきり。

若者が嫌なことから逃げてしまうという場面は、クエスト以外にも見られますが、胆力をつけるには時間がかかるので、気長に付き合っていくしかありません。

<人とのつながりが居場所にもなる>

新しい環境に飛び込む勇気がない若者もいれば、自分の居場所を見出す若者もいます。

畑仕事は自然に向かう時間が長く、スタッフやオトナリサンが同行すれば安心感も強いようです。黙って作業していても孤独でなく、ときに周りと協力しながらできる仕事は、都会に疲れてしまった若者の癒しでもあります。

サンカククエストは決められた場所に行き、そこにいる人と出会う目的が明確です。だからこそ、多くの若者は割り切って自らの役割を全うできるという良さがあります。

目的なく、慣れない環境で過ごすことが難しい(それは大人でも難しい)からこそ、「クエストに参加する」という名目で新たなチャレンジができる。そうして若者自身がエリアを広げていって、サンカクシャの外に自分の居場所を獲得していくサポートができることは私の喜びでもあります。

4.若者が希望を持って生きていけるように

まちの中にいる、面白くてかっこいい大人たちに出会ってほしい。それがサンカククエストにマッチングするときの私の強い想いです。

受け止めてくれる依頼主や伴走者がいるから、若者はたくさん失敗していいと思っています。許して励ましてくれる人たちとの間で、困難を乗り越える力をつけることにより、彼らが将来やりたいものを見つけたときにチャレンジできるように。サンカククエストは内容や方法を変容させながら、社会サンカクの一歩目を後押ししていきます。

最後にクエストに参加した若者からの声を一部お届けします。

「小さい子との関わりが楽しいと思えることに気づけました!ありがとうございました」

「クエストで関わる方々は皆さん本当にやさしく、とてもありがたいです。半面、些細なことでも自分自身で気にすることや、これが昔からできていないと思うこともあります。キチでの人とのやりとりも含め、少しずつ慣れることと、自分にやりやすい形が何かが分かっていくと良いなと思います」

「簡単な仕事なので仕事行きたくないとかがなくて精神的に楽でした!」

「誰かと一緒に作業をすることに対してこのクエストの前には、どう接したらいいだろうという不安や緊張がありました。だけど、いざ一緒にやると少しずつ誰かがいて話して仕事を共有できる喜びがでてきました。きっとこれは人間として大切な心の動きだと思っています」

「雰囲気や仕事に慣れるまで時間がかかるため、場を暖めていただきありがたかった。思ったより私は真面目なんだな~」

「今回のクエストとても楽しかったです!開催者の方もとても良い方で話しやすく、知らない方と初対面で話すことに自信がつきました。積極的に話しかけてもらえるのもすごく助かりました」

この1年を振り返りながら、若者の変化を思い出すとニヤついてしまいます。感謝できるようになったんだね、自分の苦手に気付いたんだねと、その歩みは小さくても何かを得てくれていることが分かります。

クエストをクリアしたときの若者の顔を、みなさんにお見せできたら!

疲れてへとへとなこともあれば、リラックスしていつもの調子が出始めることもあり、これはもう現場で見ていただくに限ります。

今はサンカクキチの中でできる内職クエストを探していますので、ぜひ若者のチャレンジを一緒に応援していただけたら嬉しいです。


この活動は公益財団法人パブリックリソース財団様の「東京海上日動キャリアサービス 働く力応援基金」による助成を受けています。助成団体様ならびに寄付者の皆様に厚くお礼申し上げます。


サンカククエストでは、
・若者にクエスト(仕事)を依頼いただける方
・若者のクエスト実行をサポートするボランティア
・参加したい若者
を募集中!

関心のある方は、お気軽にこちらからご連絡ください!

【問い合わせ先】
メールアドレス:staff@sankakusha.or.jp
担当:宮本緑

若者へのクエスト(仕事)依頼を検討されている方は、下記詳細をご覧いただき、ぜひお気軽にご連絡ください。

【クエスト募集の詳細】
募集:若者にお願いしたい仕事
開始時期:申込みから順次スタート
クエストを実施する若者:16~25歳ぐらいの男女
クエスト遂行の伴走者:サンカクシャ職員、応援してくれる大人、ボランティア
クエスト内容:依頼主の方から依頼内容をサンカクシャスタッフがヒアリングしながら、クエスト内容を設計します
依頼方法:下記フォームにて受付
費用:クエストに参加する若者には、報酬またはスキル・経験値の獲得を報酬として想定しています。仕事の依頼に関する費用の設定は、設計時にご相談ください。

【お申込み後の流れ】
①若者に依頼したい仕事のお申込み
②ヒアリングをもとにクエスト内容を設計
③サンカクシャが参加メンバーを決定後、参加者と打ち合わせ(オンライン予定)
④クエスト実行

お申込みいただきましたら、後日事務局からお打ち合わせの連絡をいたします。

【問い合わせ先】
申込フォーム:https://forms.gle/vMkBbDKFSV6UG9dy9
担当:宮本緑


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ライター

宮本 緑

社会サンカク事業担当

活動報告

2023.04.03