活動報告
2026.02.06
【イベント報告】夜にこぼれる若者のSOS ―アウトリーチと夜の居場所の必要性ー
2026年1月20日、NPO法人サンカクシャはオンラインイベント「夜にこぼれる若者のSOS ―アウトリーチと夜の居場所の必要性ー」を開催しました。
https://www.sankakusha.or.jp/2026/01/05/news-259/
本イベントでは、スキマバイトやリゾートバイトなどによって移動や働き方の自由度が高まる一方で、住まいや生活の不安定さを抱えながらも周囲から困難が見えにくくなっている若者の現状について、現場の実践や事例をもとに共有しました。
スキマバイトで生計を立てているものの、生活が不安定な若者が増えています。
こうした若者たちの存在は社会から見えづらく、支援につながった時にはすでに非常に困難な状況にあることも少なくありません。
今回のイベントは、「令和7年度未来応援ネットワーク事業 こどもの未来応援基金」の助成を受けて実施し、前半はNPO法人トイミッケ代表理事の佐々木大志郎さんに「見えにくい現代のホームレス」について共有いただき、後半ではサンカクシャの深夜の居場所「ヨルキチ」の実践を通して、制度のはざまで孤立する若者の実情と、つながり続ける支援の重要性について考えました。
佐々木大志郎(ささき・だいしろう) NPO法人トイミッケ代表理事

2011年に自身がホームレス状態となりネットカフェ生活を経験し、支援団体につながったことを契機に支援の世界へ。以後、「もやい」「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」「つくろい東京ファンド」等で広報・ファンドレイジング・新規事業立ち上げに携わる。2022年に任意団体トイミッケを設立し、同年10月に法人化。1979年生まれ、札幌出身。
スキマバイトが生み出した見えにくい現代のホームレス
佐々木さんは長らくホームレス支援に関わってきました。
「ホームレス」というと、路上で生活している方を想像されることも多いのですが、日々、佐々木さんたちが接しているのは、“見えにくい”状況に置かれている人たちなのだそうです。
例えば、東横広場近くのビルにある駐輪場は「24時間100円」という安さもあり、フードデリバリーの拠点のようになっています。フードデリバリーで働きながら、ネットカフェなどを転々とし、住まいを持たずに生活している人が少なくありません。
フードデリバリーやスキマバイトを組み合わせ、日銭を稼ぎながら生きていく――これが、いま増えている「現代のホームレス状態」の一つの姿であり、外からはほとんど見えないといいます。
ネットカフェと短期の仕事を行き来しながら生活しているため、統計上は把握されにくいものの、4,000人以上いるとも言われています。
しかし、この生活を長く続けることは非常に難しいのが現実です。
例えば、仕事が急に見つからなくなったり、連休の影響で「今日働いた分のお金が今日中に支払われない」ということが起こったりすると、その日の宿泊費が払えず、生活が立ち行かなくなり、突然、路上生活になるリスクがあります。
仕事終わりの深夜や早朝に困窮することも多く、公的な制度だけだと対応が追い付かないことがあり、トイミッケさんやサンカクシャのような民間の力が必要な現状があります。

そこで、トイミッケでは、「せかいビバーク」という緊急支援の取り組みを行っています。
「せかいビバーク」とは、一泊分の宿泊チケットやその日の食事、翌日に動くための最低限の持ち物をまとめた「緊急お助けパック」を、地域の協力スポットで受け取れる仕組みです。
「今夜、泊まる場所がない」と困った人がウェブサイトで検索すると、近くのスポットが表示され、そこでパッケージを受け取ることができます。まず一晩をしのぎ、翌日に相談につなげていく流れになっています。
薬局や飲食店、書店など身近な場所がスポットとなり、現在は東京・埼玉で67か所に広がっているといいます。
サンカクシャも「せかいビバーク」の受け取りスポットの一つであり、何度も手渡しを行ってきました。
実際に、受け取った人の約8割が相談につながり、公的支援や関係機関との連携へと進んでいるそうです。
2024年度に300人以上が利用し、利用者の半数が20〜30代で、40代まで含めると約7割にのぼります。
これは、炊き出しなどの従来のホームレス支援とは大きく異なる年齢構成で、住まいを失う問題が若い世代にも広がっている現状があると話します。
若者が住まいを失う背景として多いのが、友人や恋人の家に身を寄せて生活しているケースだといいます。
こうした関係は不安定になりやすく、口論をきっかけに夜中に家を出ざるを得なくなり、そのまま行き場を失ってしまうことがあるそうです。
自分名義の住まいではないため、「居られなくなった瞬間に住まいを失う」状況が起きやすいと話します。
また、「せかいビバーク」を一度利用した人が、再び相談に訪れるケースも少なくありません。
親元を離れ、アルバイトをしながらネットカフェで生活していたものの、仕事の切れ目やちょっとした行き違いで支払いができなくなり、緊急対応が必要になることもあるといいます。
こうした場面では地元に帰ることもあり、夜行バスの手配や見送りを行うこともあります。
ただ、多くの若者は再び上京することを望み、数か月後にまた相談につながるケースもあるそうです。
背景には、夜行バスの低価格化やリゾートバイトの台頭によって移動のハードルが下がり、各地を行き来しながら仕事や生活をつないでいく若者の存在があります。居場所を定められないまま移動を続け、困ったタイミングで現地の支援につながる現状があると語られました。
深夜の“駆け込み先”としてのヨルキチ
後半は、サンカクシャの寺中より、深夜の居場所「ヨルキチ」をご紹介しました。
サンカクシャでは週4日、15時から21時まで「サンカクキチ」という居場所を運営しています。家に居づらい若者や孤独を抱える若者が食事をしたり、スタッフと話したり、ゲームをしたりしながら、安心して過ごせる場所です。
サンカクキチを運営するなかで、21時の閉所時間になると「もう少しいたい」という声が多く寄せられるようになりました。
また、近年、「トー横キッズ」をはじめとして、夜の時間帯に行き場を失い、繁華街で犯罪に巻き込まれてしまう若者の存在も見えてきました。
夜の居場所のニーズを実感し、約3年前に「ヨルキチ」をはじめました。
ヨルキチは月に3回、金曜日の夜21時から翌朝5時まで開所しています。内容はサンカクキチと大きく変わらず、食事を無償で提供し、過ごし方も自由です。
実際に利用している若者からは、「一人で夜を越すのがつらい」「夜は変な方向に行きそうになる」「ご飯が食べられて助かる」「家より安心できる」といった声が寄せられました。
夜は特に孤独感が強まりやすく、「死にたい」という相談も夜に多いといいます。ヨルキチはこうした若者が誰かとつながる入口になっています。

利用後のアンケートでは、「夜だから話せることがある」「お金をかけずに家以外で過ごせるのがありがたい」「安心できて心が楽」「もっと回数を増やしてほしい」といった感想も聞かれました。
昼間は別の居場所があったとしても、夜にお金をかけずにいられる場所は少なく、ヨルキチの存在が貴重だと感じている若者も多いようです。
また、周囲の会話が耳に入ることで「自分だけじゃなく、あの人もつらいんだと感じられる」という感想もあり、同じ空間を共有すること自体が支えになっている様子がうかがえます。
ヨルキチの特徴として挙げられたのが、昼とは異なるスタッフ体制です。
現在はヨルキチ専属のスタッフが対応しており、「全部を知らないスタッフだからこそ、新しい視点がもらえる」「昼のスタッフには言えないことも、夜のスタッフには話せる」と感じる若者もいるそうです。
なかには「この話はヨルキチのスタッフだけにしてほしい」と、自分なりに相談先を選び分ける若者もおり、昼と夜で居場所が分かれていることが、安心感につながっているといいます。
昼間は利用できる支援や居場所が比較的多い一方で、夜になると公的機関は閉まり、相談先を見つけられない若者も少なくありません。
住まいや居場所を失った若者が、行き場をなくして繁華街で危険に巻き込まれる前に「夜でもいられる場所がある」と知ってもらうことが、ヨルキチの大きな役割だと語られました。
実際の現場では、家を飛び出してきた直後の若者が、キャリーバッグを持って突然ヨルキチに現れることもあります。
スタッフや利用者が戸惑いながらも、まずは「ご飯を食べよう」と迎え入れる――そうした出来事が、ヨルキチでは日常的に起きているといいます。
他団体から深夜に連絡を受け、急遽若者を受け入れるケースもあり、ヨルキチが若者の“駆け込み先”として機能している現状があります。
その日暮らしによる困難の長期化と公的支援へのつながりづらさ
意見交換では、近年スキマバイトでその日その日をつなぎながら生活している若者が、公的支援につながりにくい状況に置かれていることが語られました。
「まだ働ける」「生活保護を受けるほどではない」と考え、制度利用を避けながら日銭を稼いでいるケースや、支援者が生活保護で生活を立て直そうとしても、生活が安定する前にスキマバイトを再開して生活保護を抜けてしまい、スキマバイトでつまづく度に生活が立ち行かなくなることを繰り返しているケースがよく見られます。
また、スキマバイトの仕組み上、キャンセルによるペナルティを恐れて体調不良や精神的な不調があっても無理をして働き続けてしまう若者が多いことも語られました。

相談に来た人からは「スキマバイトで生き延びられてしまう日々を送ってきたから、相談に来るのが遅れてしまった」という後悔の声を聞いたこともあるそうです。
精神疾患や発達障害などがありながらも「なんとか生活が回ってしまう」ことで、困難が長期化・深刻化している実態があります。
支援の姿勢としては、すぐに制度につなぐことをゴールとするのではなく、不安定な循環の中にいる若者とつながり続け、本人のタイミングを待つ支援が重要になるという共通認識を持つことができました。
若者のニーズに寄り添い続けるために
今回のイベントでは、スキマバイトやリゾートバイト、夜行バスの低価格化など、移動や働き方の選択肢が広がる一方で、若者の困難が周囲から見えにくくなっている現状が共有されました。
同時に、深夜や早朝といった制度の手が届きにくい時間帯に機能する民間の取り組みや、すぐに制度につなぐことを前提としない関係づくりの重要性について参加者の間で共通認識が深まりました。
参加者からは以下のようなコメントがあがりました。
登壇者が朗らかにしゃべっているので、若者がちょっと近寄ってみようかなと思える相手として選んでいるのが、なんだか分かるような気がします
「重い荷物はみんなで持とう!」とよく言いますが、困難さが強ければ強いほど支援者側がチームになる必要がありますよね。私は行政職員ですが、支援団体のみなさんには本当にいつも感謝しています
イベントを通じて、困ったタイミングで「話せる相手」や「行ける場所」があることが、その後の支援につながる大切な土台になっていることが改めて浮かび上がる時間となりました。
これからもサンカクシャでは、若者のニーズに合った取り組みを作り続けていきます。
前回の報告イベントはこちら>>
【イベント報告】スキマバイト・闇バイトと若者支援(2026.01.22開催)
https://www.sankakusha.or.jp/magazine/20250123/
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ライター
菊川恵
活動報告
2026.02.06