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活動報告

2026.01.22

【イベント報告】スキマバイト・闇バイトと若者支援

2026年1月17日、NPO法人サンカクシャはオンラインイベント「スキマバイト・闇バイトと若者支援」を開催しました。
https://www.sankakusha.or.jp/2025/12/20/news-258/

本イベントでは、スキマバイトや闇バイトをめぐる現状と、その背景にある若者の困難について、取材の現場と支援の現場、二つの視点から考えることを目的としました。

ゲストには、スキマバイトや闇バイト問題を継続的に取材しているライターの中村真暁さんを迎え、取材を通じて見えてきた若者の実態や構造的な課題について報告いただきました。
あわせて、若者支援の現場に立つサンカクシャのスタッフが、日々寄せられている相談や具体的な支援事例を紹介しながら、支援の役割と今後の課題について共有しました。

スキマバイトの実態と、若者が直面するリスク

取材と支援の現場から見えてきたこと

若者からの相談が年々増える中で、近年サンカクシャが特に危機感を抱いているのが、スキマバイトをきっかけに闇バイトへとつながってしまうケースです。
今回のオンライン報告会は、こうした現状を共有し、「現場で何が起きているのか」「若者はどのような状況に置かれているのか」を考える機会として、ソーシャルグッド基金の助成を受けて実施しました。

前半では、東京新聞記者の中村真暁さんが、体験取材を通じて見えてきたスキマバイトの実態について報告しました。
後半では、NPO法人サンカクシャの寺中から、支援の現場から見える若者の実情と課題についてお話ししました。


中村真暁(なかむら・まあき)東京新聞デジタル編集部

 1985年、石川県津幡町生まれ。2009年に東京新聞に入社し、北陸本社経済部や東京本社社会部などを経て2025年8月から東京本社デジタル編集部へ。
生活困窮者が多く暮らす東京・山谷地域での取材をきっかけに、貧困問題に関心を持つ。
2020年貧困ジャーナリズム賞受賞。2024年に社会福祉士資格を取得。

記者が体験取材で見た「スキマバイト」の現実

中村さんは、長年にわたり貧困問題の取材に携わってきた記者です。今回スキマバイトを取材するにあたり、「実際に体験しなければ分からない」と考え、自ら複数のスキマバイトアプリに登録し、働く体験取材を行いました。

最初に応募したのは、「スタンバイバイト」と呼ばれる仕事でした。欠員が出た場合に備えて待機する仕事で、一定時間待機すれば賃金が支払われるという内容でした。
集合場所は新宿駅近くの雑居ビルで、朝早い時間に集められた待機部屋には数人の男女がいました。仕事内容が分からないまま、ほとんど会話のない状態で待機が続いたといいます。

結局、その日は仕事に呼ばれることはありませんでしたが、掲示されていた注意書きに中村さんは強い違和感を覚えました。
「どの仕事になるかは当日にならないと分からない」「夜10時頃まで働けるようにすること」「個人の都合で断った場合、賃金が支払われない可能性がある」といった内容が記されていました。
長時間拘束される可能性があるにもかかわらず、仕事内容は不明確で、断ると賃金が支払われないかもしれない条件でした。

交通費についても明記はなく、他の待機者に話を聞くと自己負担だということが分かりました。遠方まで行かされる場合もあり、その負担はすべて働く側が背負う仕組みでした。それでもこの仕事を続ける理由を尋ねると、「待機だけで終われば得だから」という声が返ってきたといいます。

取材を進める中で、中村さんは日雇い派遣の問題や、実質的に別会社の指示で働く「偽装請負」の可能性がある現場にも出会いました。
企業側は人手不足を理由に違法性を否定しましたが、「それを守っていたら日本は回らない」という言葉から、労働者保護の意識の低さを感じたと振り返ります。

別のアプリでは、契約先と実際の連絡元が異なるケースもありました。登録した会社とは一度も会わず、実体の見えない会社名を名乗るよう指示され、不安を覚えたといいます。
労働局に相談したところ、不適切な求人の可能性があると指摘されました。

一方で、取材後に求人がアプリから消えたり、支払い条件や交通費の扱いが明記されたりするなど、改善された点もありました。問題を可視化することで、変化が生まれる側面もあったといいます。

中村さんは、ネットカフェで暮らしながらスキマバイトを掛け持ちする人たちにも話を聞きました。即日入金へのニーズは非常に高く、評価制度への不安から無理をして働き、疲弊していく姿がありました。
発達障害のグレーゾーンにあると自ら語る人も多く、継続的な人間関係を築かずに働ける一方で、社会とのつながりを失っていく危うさも見えてきたといいます。

支援の現場から見える、スキマバイトと闇バイトの接点

後半は、サンカクシャの寺中から、団体の活動と若者支援の現場について説明しました。

サンカクシャにつながる若者の多くは、18歳を過ぎた途端に支援の手が届かなくなり、住まいや仕事、生活の基盤を一人で抱え込んでいます。
相談内容で特に多いのは住まいの問題で、所持金がほとんどない状態で助けを求めてくる若者も少なくありません。

発表では、スキマバイトや闇バイトに巻き込まれた具体的な事例も紹介されました。
SNS経由の仕事が闇バイトだったと気づかないまま関与し、脅迫を受けた若者。
生活困窮の中でスキマバイトを重ね、制度や支援につながれずホームレス状態に陥った若者。
高収入をうたう仕事に誘われ、海外で危険な目に遭った若者など、いずれも相談先が分からないまま孤立していたケースでした。

昨年実施したアンケートでは、サンカクシャにつながった若者の16%が、過去にグレーな仕事や闇バイトに関わった経験があると回答しました。一方で、行政につながった経験がない若者は35%にのぼっています。
危険な状況にあっても、公的支援につながれないままになっている現実が浮かび上がりました。

取材と支援の視点が重なるところ

中村さんの取材と、寺中さんの支援現場の話は、異なる立場から同じ構造を照らし出していました。
スキマバイトは「自由で手軽な働き方」に見える一方で、即日入金や評価制度に縛られ、「選んでいるようで選べていない」状況を生み出しています。

公的支援は若者にとって敷居が高く感じられる一方、SNS上には「即日現金」「誰でもできる」といった危険な情報が溢れています。相談先にたどり着く前に、スキマバイトや闇バイトに流れ込んでしまう若者が後を絶ちません。

スキマバイトを「入口」で終わらせないために

スキマバイトには、柔軟な働き方というメリットもあります。しかし、それが生活困窮や孤立から抜け出す出口にならないまま、より危険な仕事への入口になってしまう現状は見過ごせません。

若者を自己責任で切り捨てるのではなく、安心して相談できる場所につなぎ、時間をかけて生活を立て直していく支援が必要です。
今回の報告会は、スキマバイトの問題を通じて、若者を社会全体で支える視点の重要性を改めて問いかける機会となりました。


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