サンカクシャ

スタッフダイアリー

2024.04.22

ロマンチックモード

「オレの歩き方ってヤンキーっぽいですか?」
おもむろに彼は訊ねた。
「ちょっと歩いてみて」
ボクは歩くよう促した。
彼はランウェイに初めて挑むモデルのように強張った面持ちでボクの前を数メートル歩いてみせた。
怒らせた肩で風を切る。もちろんガニ股。コントで演じられるチンピラの一歩手前。触る者みな傷つけそうなギザギザハートがそこを通り過ぎた。正直、こんな奴が前から歩いてきたらボクなら間違いなく避ける。すれ違いたくない。その男凶暴につき、君子危うきに近寄らずだ。
ボクはその評価感想をそのまま彼に伝えた。
彼は屈託なく笑った。嬉しそうですらあった。どうやら歩き方を変えるつもりはないらしい。
まあいいけど。

「目元に感情」「口元に欲望」「顔つきに主張」「居住まいに性格」「身嗜みに生活」「歩き方に生き様」ってな具合に人って結構見た目に本質がむき出している(とボクは勝手に思っている)。ルッキズムではないが、人ってやっぱり見た目なのだ。

アンタッチャブルをまとった彼はその数日後、ボクらの前からいなくなった。勢いよくサンカクシャを駆け抜けていった。彼の生き急ぐ姿にボクは若さを覚えた。
駆けのぼるように落ちてゆく夕陽。
そう歌ったのは誰だっけ?
眩しすぎるぜ、ヘイブラザー!
ボクは人を見る判断基準に「立ち去り方に若さ」という指標を新たに加えようと思った。

悲しいかな、あんな駆け抜け方をもうボクがすることはない。向こう見ずにやれてた頃もあったが今は無理だ。いつの間にかボクは保身をしっかりと身につけてしまった。
走らず、飛ばず、転ばず…地に足をつけ、綺麗な道を選び、前に進めるようになることを人は大人になるというのかもしれない。
そうなのであれば、ああ、大人になるってなんて寂しいことなんだろう。

「遊ぶ相手が強いほど高く飛べる」
あのセリフを読みたくて松本大洋の『ピンポン』をボクはまた手に取った。


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